育児時短就業給付金とは|対象・支給額・申請の流れと会社の手続き
育休から復帰して時短勤務を始めると、勤務時間が減った分だけ給与も下がります。この収入の減少を補うため、2025年4月に雇用保険の「育児時短就業給付金」ができました。2歳未満の子を育てるために時短で働く人に、時短中に支払われた賃金の原則10%が支給されます。
この記事では、対象になる人と月の条件、支給額の計算方法と上限、申請の流れを順に説明します。手続きは原則として会社がハローワークに行うため、総務担当者が準備する書類と期限、社会保険の届出もあわせてまとめました。
金額は2026年8月1日に改定された額(2027年7月31日まで適用)で記載しています。
育児時短就業給付金のあらまし
どんな給付か
育児時短就業給付金は、雇用保険の被保険者が2歳未満の子を養育するために、1週間あたりの所定労働時間を短くして働いた場合に支給されます。所定労働時間とは、就業規則や雇用契約で決められた勤務時間のことです。支給額は、時短中の各月に支払われた賃金の10%が基本です。
育児休業給付金との違い
育児休業給付金は、仕事を休んでいる間の収入を補う給付です。育児時短就業給付金は、働きながら勤務時間を減らしている間の給与の減少を補います。月の初日から末日まで育児休業給付を受けられる休業をしていた月は、時短の給付は出ません。
対象期間は子が2歳になるまで
給付の対象は、子が2歳に達する日(2歳の誕生日の前日)の前日を含む月までです。会社に義務づけられている短時間勤務制度は3歳未満の子が対象ですが、給付は2歳未満までです。2歳以降も時短を続けても、給付は止まります。
対象になる人の要件

2歳未満の子のために週の所定労働時間を短縮している
本人の申出にもとづき、会社が1週間あたりの所定労働時間を短縮する措置をとっていることが必要です。1日6時間勤務のような法律上の短時間勤務制度に限らず、週の所定労働日数を減らした結果として週の労働時間が短くなる場合も含みます。短時間正社員やパートタイマーへの転換、転職によって時短になった場合も対象です。
育休から引き続き時短を始めたか、雇用保険の加入期間がある
次のどちらかを満たす必要があります。
- 育児休業給付の対象となる育休から引き続き、同じ子について時短を始めた(育休終了日の翌日から時短開始の前日までが14日以内であれば「引き続き」と扱われます)
- 時短開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(ない場合は労働時間が80時間以上ある月)が12か月ある
育休を取らずに、産後すぐ時短で復帰した場合でも、後者の加入期間を満たせば対象になります。
週20時間を下回る時短には注意
短縮後の週の所定労働時間に上限・下限はありません。ただし、週20時間を下回ると、原則として雇用保険の被保険者ではなくなり、給付の対象外になります。例外は、子が小学校に入学するまでに週20時間以上の勤務に戻ることが就業規則などの書面で確認できる場合です。
給付が出る月・出ない月
支給対象月の4つの条件
給付は暦月(1日から末日まで)ごとに判断します。次の4つをすべて満たす月が支給対象月です。
- 初日から末日まで続けて雇用保険の被保険者である月
- 1週間あたりの所定労働時間を短縮して働いた期間がある月
- 初日から末日まで続けて、育児休業給付または介護休業給付を受けていない月
- 高年齢雇用継続給付の受給対象になっていない月
月の途中で始めた・やめた場合
時短を始めた日が月の途中でも、その月から対象になります。たとえば4月21日に育休から復帰して時短を始めた場合、4月分から支給対象月です。時短をやめた日の属する月まで対象になります。
一方、月の途中で退職すると、その月は「初日から末日まで被保険者」に当たらないため対象外です。月末に退職した場合は、その月も対象になります。
給付が終わる月にも注意が必要です。子が2歳に達する日の前日のほか、次の日を含む月で給付は終わります。別の子の産前産後休業・育児休業・介護休業を始めた日の前日、別の子のための時短を始めた日の前月末日、子を養育しなくなった日です。
支給額の計算と上限

基本は「支払われた賃金×10%」
支給対象月に支払われた賃金が、時短開始時の賃金月額の90%以下であれば、支給額は「その月に支払われた賃金×10%」です。時短開始時の賃金月額は、原則として時短開始前6か月の賃金(賞与を除く)から計算します。育休から引き続き時短を始めた場合は、育休のときの賃金日額を使います。
賃金の下がり方が小さいと支給率が下がる
時短中の賃金が、時短開始時の賃金月額の90%を超えて100%未満の場合は、賃金と給付の合計が時短前の賃金月額を超えないよう、支給率が10%より低く調整されます。100%以上であれば、賃金が減っていないとみなされ、支給されません。
計算例
厚生労働省の案内にある例をもとに、時短開始時の賃金月額が30万円の人の場合を示します。
| 時短中に支払われた賃金 | 時短前との比率 | 支給率 | 支給額 |
|---|---|---|---|
| 200,000円 | 約67%(90%以下) | 10% | 20,000円 |
| 280,000円 | 約93%(90%超100%未満) | 6.43% | 18,004円 |
| 300,000円 | 100% | なし | 支給されない |
2026年8月1日以降の上限・下限
| 項目 | 金額(2027年7月31日まで) |
|---|---|
| 支給限度額(賃金と給付の合計の上限) | 484,121円 |
| 時短開始時賃金月額の上限 | 496,200円 |
| 時短開始時賃金月額の下限 | 96,090円 |
| 最低限度額(これ以下だと支給なし) | 2,562円 |
その月の賃金が484,121円以上なら支給されません。賃金と給付の合計が484,121円を超える場合は、超えない範囲に減らされます。これらの額は「毎月勤労統計」の平均定期給与額にもとづき、毎年8月1日に改定されます。
ここでいう賃金は、その月に支払われた賃金です。その月の労働に対する賃金でも、翌月に支払われたものは翌月の分として数えます。臨時の賃金や賞与など3か月を超える期間ごとに支払われるものは含みません。数か月分まとめて払う通勤手当は、月数で割って各月に振り分けます。
申請の流れ(会社が行う手続き)

手続きは原則として会社が、事業所を管轄するハローワークに行います。本人が希望すれば、受給資格確認と支給申請は本人が行うこともできます。電子申請も使えます。
手続き1:時短開始時の賃金を届け出る
「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書・所定労働時間短縮開始時賃金証明書」を出します。賃金台帳や出勤簿、労働条件通知書などを添付します。育休から引き続き同じ子について時短を始めた場合は、この届出は不要です。この届出だけは、本人ではなく会社が行う必要があります。
手続き2:受給資格の確認を受ける
「育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書」に、母子健康手帳など育児の事実が分かる書類、時短開始日と本来の週所定労働時間が分かる書類を添えて出します。同じ子で育児休業給付を受けていた場合は、母子健康手帳などの提出は不要です。
手続き3:初回の支給申請をする
原則として2か月分をまとめて申請します。支給対象月の賃金の額と支払状況、短縮後の週所定労働時間が分かる書類(賃金台帳、出勤簿など)を添えます。期限は、最初の支給対象月の初日から4か月以内です。たとえば7月10日に時短を始めた場合、提出期限は10月31日です。手続き2と同時に出すこともできます。
手続き4:2回目以降も2か月ごとに申請する
ハローワークから届く「育児時短就業給付次回支給申請日指定通知書」に書かれた期間内に申請します。期限は次の支給対象月の初日から4か月以内で、たとえば9月・10月分なら12月31日までです。週の所定労働時間に変更がなければ、労働時間の確認書類は省略できます。本人が希望すれば、1か月ごとの申請も可能です。
申請後は、ハローワークが賃金台帳などで内容を確認し、要件を満たしていれば支給決定をします。支給決定通知書は本人に渡してください。振込は支給決定から約1週間後で、本人名義の口座に入ります。
2026年8月からの手続きの見直し
2026年8月1日から、時短の給付について事務の取扱いが一部見直されました。会社側の負担を軽くする内容です。
1つ目は賃金証明書の記載の省略です。育休が終わってから時短を始めるまでの間に、賃金の支払いがないことが賃金証明書と添付書類で確認できれば、育休開始前の賃金支払状況の欄(⑨〜⑪欄)の記載を省略できるようになりました。
2つ目は労働時間の計算です。フレックスタイム制、変形労働時間制、シフト制で働く人について、週所定労働時間の計算方法が一部見直されました。シフト制の場合は、時短前は時短開始前3か月間、時短後は支給対象月の賃金の算定期間の実際の労働時間をもとに、週あたりの時間を計算します。また、時短開始日と週所定労働時間を確認する書類として「育児時短就業期間等に係る証明書」の様式例が改訂され、提出できるようになりました。
会社が並行して行う社会保険の手続き
育児休業等終了時の報酬月額変更
時短で給与が下がっても、健康保険・厚生年金の保険料はそのままでは下がりません。育休終了後、3歳未満の子を養育している人は、育休終了日の翌日の属する月以後3か月間の報酬の平均にもとづき、4か月目から標準報酬月額を改定できます。届出名は「育児休業等終了時報酬月額変更届」です。本人の申出を受けて会社が年金事務所などに出します。
養育期間の標準報酬月額の特例
標準報酬月額が下がると、将来の年金額にも影響します。「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を出すと、3歳未満の子を養育している期間は、下がる前の標準報酬月額で年金額を計算してもらえます。保険料は下がった額のままです。日本年金機構も、育休終了後に報酬が下がった場合は月額変更届とあわせて出すよう案内しています。
よくある質問
育休を取らずに時短で復帰しても受けられますか
受けられます。この場合は、時短開始日前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月あることが必要です。会社は時短開始時の賃金証明書を出します。
子が2歳になる前に通常勤務へ戻したらどうなりますか
時短を終えた日の属する月までが支給対象月です。たとえば3月20日で時短を終えて21日から通常勤務に戻った場合、3月分までが対象になります。以後の月は給付の対象になりません。
パートタイマーでも対象ですか
雇用保険の被保険者で、2歳未満の子のために週の所定労働時間を短縮していれば対象です。時短後に週20時間を下回る場合は、前述の例外に当たるかを確認してください。
2人目を妊娠して産前休業に入ったらどうなりますか
産前産後休業を始めた日の前日を含む月で、上の子の時短の給付は終わります。
給付金に税金はかかりますか
育児休業等給付は非課税とされています。雇用保険の給付なので、所得税はかかりません。
本人が自分で申請することはできますか
受給資格確認と支給申請は本人も行えます。ただし時短開始時の賃金の届出は会社が行う必要があり、賃金台帳などの書類も会社が用意します。
まとめ

育児時短就業給付金は、2歳未満の子を育てるために時短勤務をしている雇用保険の被保険者に、時短中に支払われた賃金の原則10%を支給する制度です。賃金の下がり方が小さいと支給率が下がり、時短前と同じ水準なら支給されません。2026年8月以降の支給限度額は484,121円です。
会社は、時短開始時の賃金の届出(育休から引き続く場合は不要)、受給資格確認、2か月ごとの支給申請を、期限内にハローワークへ行います。あわせて、育児休業等終了時の月額変更届と養育特例の申出も検討してください。復帰前に本人と勤務時間・給与・申請の段取りを確認しておくと、手続きが滞りません。
蓮池社会保険労務士事務所では、育児時短就業給付金について、要件の確認から賃金証明書・申請書の作成、ハローワークへの申請や社会保険の届出までサポートしています。大阪を中心に対応しています。サービス内容と料金案内をご覧のうえ、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
参考(公的機関の情報)
- 育児時短就業給付の内容と支給申請手続(2026年8月1日時点版・厚生労働省/ハローワーク)
- 育児休業等給付について(厚生労働省)
- 育児休業等給付の申請手続きを見直します(厚生労働省リーフレット)
- 育児休業等終了時報酬月額変更届の提出(日本年金機構)
- 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(日本年金機構)
※本記事は2026年10月時点の法令・制度にもとづく一般的な解説です。個別のケースでは結論が異なる場合があります。