育児休業給付金10割の条件|出生後休業支援給付金の要件と申請
「育休中の給付が手取り10割になった」と聞いて、自分も対象になるのか気になっている方は多いと思います。正確には、育児休業給付金そのものが10割になったわけではありません。2025年4月に「出生後休業支援給付金」という上乗せの給付ができ、条件を満たすと、育児休業給付金の67%に13%が足されて合計80%になります。社会保険料の免除と非課税の扱いを合わせると、手取りで見て10割相当になる、という仕組みです。
この記事では、10割相当になるための条件を、夫婦それぞれの立場から整理します。配偶者が専業主婦(夫)や自営業の場合の扱い、支給額の計算例、上限額、申請の方法と期限まで、2026年10月時点の制度にもとづいて解説します。
産後パパ育休そのものの仕組みや、育児休業給付金の振込時期については別の記事で扱うため、ここでは「13%の上乗せを受けられるかどうか」に絞って説明します。
「手取り10割相当」の正体は出生後休業支援給付金
給付率は67%+13%=80%
育児休業給付金と、産後パパ育休中に支給される出生時育児休業給付金の給付率は、休業開始時の賃金の67%です。ここに出生後休業支援給付金の13%が上乗せされ、合計で80%になります。
上乗せの対象は最大28日分です。育休の全期間が80%になるわけではありません。29日目以降は通常どおり67%(育休開始から181日目以降は50%)に戻ります。
なぜ80%で「10割相当」になるのか
育児休業中は、会社が手続きをすると健康保険と厚生年金の保険料が免除されます。会社から給与が出ていなければ、雇用保険料もかかりません。さらに育児休業等給付は非課税で、所得税がかかりません。
ふだんの給与からは社会保険料や所得税が差し引かれています。80%の給付からはこれらが引かれないため、休業前の手取りと同じくらいになります。厚生労働省も「80%の給付率で手取り10割相当」と説明しています。
10割にならない人もいる
「10割相当」はあくまで目安です。次のような場合は、休業前の手取りを下回ります。
- 賃金が高く、給付の上限額にかかる人
- 年収に占める賞与の割合が大きい人(賞与は賃金日額の計算に入りません)
- 住民税の支払いが続く人(住民税は前年の所得をもとにかかるため、休業中も納付があります)
出生後休業支援給付金を受けられる条件

条件は大きく2つです。本人が決められた期間内に14日以上休むこと、そして配偶者も14日以上休むこと(または配偶者の育休が不要な事情があること)です。
条件1:本人が対象期間内に通算14日以上休む
本人が、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の対象となる休業を、対象期間内に通算14日以上取得する必要があります。対象期間は、本人が産後休業をしたかどうかで変わります。
- 父親(産後休業をしていない人):子の出生日(または出産予定日のうち早い日)から、出生後8週間を経過する日の翌日まで
- 母親(産後休業をした人):子の出生日(または出産予定日のうち早い日)から、出生後16週間を経過する日の翌日まで
母親は出産後8週間が産後休業で、この期間は育休になりません。そのため、産後休業が明けてからの8週間(おおむね出生後9週目から16週目)のあいだに育休を14日以上取ることになります。
条件2:配偶者も出生後8週間以内に通算14日以上休む
配偶者のほうは、子の出生後8週間以内(出生日または予定日のうち早い日から、遅い日から8週間を経過する日の翌日まで)に、通算14日以上の育児休業を取得している必要があります。配偶者が会社員なら、出生時育児休業給付金か育児休業給付金が支給される休業であることが条件です。配偶者が公務員の場合は、各種法律にもとづく育児休業が対象になります。
本人の要件と配偶者の要件の対照表
| 立場 | 休業が必要な期間 | 必要な日数 |
|---|---|---|
| 父親が本人として受け取る場合 | 出生後8週間以内 | 通算14日以上 |
| 母親が本人として受け取る場合 | 出生後16週間以内(実際は産後休業明けの8週間) | 通算14日以上 |
| 配偶者側の条件(父母共通) | 出生後8週間以内 | 通算14日以上(または「配偶者の育休を要件としない場合」に該当) |
14日は通算です。産後パパ育休を2回に分けて取った場合も、合計で14日以上あれば条件を満たします。
配偶者の育休がなくても受けられるケース
「配偶者の育児休業を要件としない場合」の7つ
子の出生日の翌日の時点で、配偶者が次のいずれかに当てはまる場合は、配偶者が育休を取っていなくても条件2を満たします。
- 配偶者がいない(一定の条件を満たす行方不明を含む)
- 配偶者が子と法律上の親子関係がない
- 本人が配偶者から暴力を受けて別居している
- 配偶者が無業者である
- 配偶者が自営業者やフリーランスなど、雇用される労働者でない
- 配偶者が産後休業中である
- 1〜6以外の理由で、配偶者が給付金の対象となる育休を取れない
父親が申請する場合はほぼ自動的に満たす
出産した母親は、出生日の翌日には産後休業中です。そのため、父親が本人として申請する場合は、6の「配偶者が産後休業中」などに当てはまり、条件2を満たすことになります。父親は、自分が出生後8週間以内に14日以上休めば、13%の上乗せを受けられます。
母親が申請する場合は父親の育休が必要
母親が本人として上乗せを受けるには、原則として父親が出生後8週間以内に14日以上の育休を取っている必要があります。父親が会社員で、育休を取らなかったり、取っても14日未満だったりすると、母親側の13%は支給されません。父親が自営業やフリーランス、無業であれば、4か5に当てはまるため、母親は自分が14日以上休めば対象になります。
7の「育休を取れない」には、たとえば配偶者が雇用保険に入っていない、有期雇用で育休の対象外になる、といった事情が当たります。会社の繁忙など単なる都合は対象になりません。該当するかどうかの判断は事情によって変わるため、迷うときはハローワークや専門家に確認してください。
支給額と上限額の計算例

計算式
出生後休業支援給付金の額は「休業開始時賃金日額 × 休業日数(28日が上限)× 13%」です。休業開始時賃金日額とは、休業前6か月間の賃金(賞与を除く)の総額を180で割った額のことです。
月給30万円の場合の例
たとえば、休業前6か月の賃金が毎月30万円(賞与を除く)だった人が、28日間休業した場合の計算例です。賃金日額は30万円×6か月÷180=1万円になります。
| 給付金 | 計算 | 支給額 |
|---|---|---|
| 出生時育児休業給付金または育児休業給付金(67%) | 10,000円×28日×67% | 187,600円 |
| 出生後休業支援給付金(13%) | 10,000円×28日×13% | 36,400円 |
| 合計(80%) | 10,000円×28日×80% | 224,000円 |
育児休業給付金のほうは本来30日単位(支給単位期間)で計算されますが、ここでは比較しやすいよう28日分で示しています。
上限額(2026年8月1日以降の額)
休業開始時賃金日額には上限があり、2026年8月1日から2027年7月31日までは16,540円です。28日休んだ場合の出生後休業支援給付金の上限は60,205円、下限は11,658円です。同じ期間の出生時育児休業給付金の上限(28日)は310,290円です。賃金日額の上限は毎年8月1日に見直されます。
休業中に給与が出た場合
休業中に会社から賃金が支払われると、67%の給付金は減額されることがあります。ただし、出生後休業支援給付金の13%は、賃金が出ても減額されません。例外は、支払われた賃金が「賃金日額×休業日数」の80%以上になり、67%の給付金が不支給になった場合です。このときは13%の給付金も支給されません。
夫婦の取り方別に見る上乗せの有無
夫婦とも会社員の場合を中心に、よくある取り方で上乗せがどうなるかをまとめます。
- 父親が出生後8週間以内に14日以上、母親が産後休業明けの8週間に14日以上休む:夫婦それぞれが最大28日分の13%を受け取れます。
- 父親だけが14日以上休み、母親は産後休業明けに育休を14日以上続ける:父親の日数が足りているので、母親も対象です。
- 父親の休業が14日未満:父親自身も母親も、上乗せは受けられません。1週間ずつの産後パパ育休を2回取って合計14日にする、といった組み合わせで条件を満たせます。
- 母親が自営業で父親が会社員:父親は、配偶者が「雇用される労働者でない」に当たるため、自分が14日以上休めば対象です。
申請の方法と期限

原則は会社がハローワークにまとめて申請
出生後休業支援給付金だけの申請書があるわけではなく、原則として出生時育児休業給付金または育児休業給付金の申請書で一体的に申請します。提出するのは会社で、提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークです。電子申請もできます。本人が希望すれば、本人が直接提出することも可能です。
申請書の記入と添付書類
申請書の配偶者の欄には、配偶者が会社員なら被保険者番号、公務員なら育休開始日、育休が不要なケースならその番号を、いずれか1つ書きます。あわせて、配偶者の状況に応じた確認書類を添えます。
- 配偶者が会社員で育休を取った場合:配偶者であることが分かる書類(続柄つきの住民票の写し、配偶者の氏名・生年月日が記載された母子健康手帳の出生届出済証明のページなど)
- 父親が申請し、母親が出産している場合:母子健康手帳の出生届出済証明のページ、または医師の診断書(分娩予定日証明書)
- 配偶者が無業者・自営業者の場合:配偶者の所得課税証明書など
2026年8月1日からは、母親が申請する場合も、配偶者の確認書類として母子健康手帳の写し(出生届出済証明のページ。配偶者の氏名・生年月日が記載されたものに限る)を出せるようになりました。手帳で確認できないときは、住民票の提出を求められることがあります。
申請期限
期限は、一緒に申請する給付金の期限と同じです。
- 産後パパ育休分:出生後8週間を経過する日の翌日(28日取り終えた日の翌日などの例外あり)から、2か月を経過する日の属する月の末日まで
- 育児休業分:育休開始日から4か月を経過する日の属する月の末日まで
あとから単独で申請することもできる
初回の申請時に条件がそろっていなかった場合、13%の分は不支給と決定されます。その後、配偶者の育休取得が確定するなどして条件を満たしたら、要件を満たした日から10日以内に「出生後休業支援給付金支給申請書」を出します。単独で申請する場合は、67%の給付金の支給決定が出たあとでないと申請できません。
申請でつまずきやすい点
母親の申請は父親の支給決定を待つ
配偶者が雇用保険の被保険者である場合、ハローワークは配偶者の給付金が支給決定されているかを確認します。母親側の13%を申請するときは、父親の出生時育児休業給付金などが支給されたあとに申請する必要があります。父親の会社の手続きが遅れると、母親の上乗せも遅れます。夫婦で勤務先が違う場合は、互いの進み具合を共有しておくと安心です。
休業中の就業日数に注意
産後パパ育休中に働きすぎて出生時育児休業給付金が不支給になると、13%の上乗せも支給されません。28日休む場合の就業の上限は10日(10日を超える場合は80時間)で、休業日数が短いほど上限も小さくなります。
よくある質問
出生後休業支援給付金は2回受けられますか
同じ子について受けられるのは最大28日分です。産後パパ育休で受け取った日数があれば、その分を差し引いた日数が残りの上限になります。
配偶者が公務員の場合はどうなりますか
公務員の配偶者が、各種法律にもとづく育児休業を出生後8週間以内に通算14日以上取っていれば、条件を満たします。申請書には配偶者の育休開始日を書き、任命権者からの育休承認の通知書の写しなど、休業期間が分かる書類を添えます。
パートや契約社員でも対象ですか
雇用保険の被保険者で、育児休業給付金などの要件を満たしていれば対象です。有期雇用の場合は、契約期間の満了が明らかでないことなど、別途の要件があります。
父親の育休が13日で終わってしまいました
出生後8週間の期間内であれば、もう1回休業を追加して通算14日以上にすれば条件を満たします。期間を過ぎてしまうと、あとから日数を足すことはできません。
10割相当なら休業中の手取りは減りませんか
上乗せは最大28日分なので、それ以降は67%、181日目以降は50%になります。上限額にかかる人や、住民税の支払いがある人は、期間中でも手取りが減ります。厚生労働省の試算ツールで目安を確認できます。
会社が手続きをしてくれません
申請は原則として会社経由ですが、本人が直接ハローワークに出すこともできます。ただし賃金の証明などは会社にしか作れない書類があるため、まずは総務担当者に相談してください。
まとめ

育児休業中の給付が「手取り10割相当」になるのは、2025年4月に始まった出生後休業支援給付金(13%)が、育児休業給付金などの67%に上乗せされるためです。上乗せは最大28日分で、本人が対象期間内に14日以上休み、配偶者も出生後8週間以内に14日以上休む(または育休が不要な事情がある)ことが条件です。
父親は、母親が産後休業中のため自分が14日以上休めば対象になります。母親が上乗せを受けるには、会社員の父親が14日以上休んでいることが必要です。申請は会社がハローワークにまとめて行い、配偶者の状況に応じた書類を添えます。夫婦で休む時期を出産前に決めておくと、取りこぼしを防げます。
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参考(公的機関の情報)
- 育児休業等給付について(厚生労働省)
- 育児休業等給付の内容と支給申請手続(2026年8月1日改訂版・厚生労働省/ハローワーク)
- 育児休業等給付の申請手続きを見直します(厚生労働省リーフレット)
- Q&A~育児休業等給付~(厚生労働省)
- 厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)(日本年金機構)
※本記事は2026年10月時点の法令・制度にもとづく一般的な解説です。個別のケースでは結論が異なる場合があります。